イタリアの北東部のフリウリ(Friuli)州で生まれ育ったアンドレア・ベルトン(Andrea Berton)は、現代イタリア料理を代表するトップシェフの一人。グアルティエーロ・マルケージ(Gualtiero Marchesi)の元で修行を積んだ後、ロンドンフィレンツェをはじめ、モンテカルロでは、ミシュラン3つ星シェフのアラン・デュカス(Alain Ducasse)の元で働くなど、世界の一流レストランで腕を磨く。2005年には、ミラノのレストラン『Trussardi alla Scala』とコラボレーションを行い、数々の賞およびミシュラン2つ星を獲得したのち、2013年にミラノPiazza Gae Aulentiに自身の初のレストラン『Restaurant Berton』をオープンすると、僅か1年でミシュラン1つ星を獲得した。2015年には、ミラノ国際博覧会の大使に任命されるなど、その後も料理界の第一線で活躍し、複数のプロジェクトも積極的に請け負う。2016年にはイタリア有数のリゾート地、コモ湖にあるつ星ホテル『Il Sereno』との共同事業を開始。のちにミシュラン1つ星を獲得するレストラン『Berton Al Lago』をオープンした他、翌年にはミラノに新たなレストラン『DRY Milano』を開店するなど、精力的に活動を広げる。2018年には、彼の代表料理「鳩のラザニア」を讃え、『Guida Ristoranti Italia』から栄誉あるPommery2019年ベスト料理部門)が贈られた。

Wakapedia’s Andrea Berton

アンドレア・ベルトンは私たちの胃袋を掴む前に、愛嬌のある魅力的な人柄で、私たちの心を捉えた。195センチという超高身長(ワカペディアのインタビューでお決まりの頬へのキスは、背が高すぎてお預けになりそうな予感)、スリムで自信に満ち、余裕のある落ち着いた雰囲気は、まるで商談を行う一流ビジネスマンのよう。そんな彼がコックコートを身にまとうと、子供の頃から料理に情熱を注いできたことが感じられるほど、とてもよく馴染んでいる。アンドレア・シェフとの出会いは、ミラノの注目オシャレスポット、ガリバルディ駅近くにオープンした『Restaurant Berton』という彼の名前が付けられたレストランだ。

「まだこのエリアが工事中の頃、毎日建設現場の前を通るうちに、この場所で僕のレストランを開くような気がしたんだ」と話すアンドレア。このエリアは、高層ビルや大きな窓など、モダンで直線的な建物が立ち並んでおり、シェフと料理の雰囲気にぴったりだ。彼という人物を表す4つの単語は、品質、優雅さ、清潔さ、バランスの良さだろう。それは、彼が作る料理には「正確さとシンプルさ」の中に、斬新で奇想天外なアイデアが隠れていて、人々を楽しませてくれるから。そう、まるで彼の代表作、「ピザのリゾット」のようにね。

それでは、よだれとおなかの音に注意しながら、アンドレア・ベルトンのお茶目で魅力的な人柄と、料理への情熱が溢れるインタビューをめしあがれ!

ワカペディア: こんにちは、シェフ。インタビューのリクエストを受けてくれて、ありがとうございます!え~っと、、、私たちのウェブサイトは、カジュアルなスタイルだから、あまりフォーマルなものにしたくないの。お堅い雰囲気になる前に、最初の質問です!いくつか質問しても良い“かな”?

ベルトン:もちろん、ノープロブレム!

ワカペディア:(ホッと胸を撫でおろしながら)よかった!正直言うと、私達にとってはあなたがミラノで活躍していた『Trussardi alla Scala』時代の印象が強いんだけど、あなたのキャリアについてもっと知りたいの。是非、あなたのストーリーを聞かせてもらえる?

ベルトン:喜んで!僕の料理に対する情熱は、子供の頃から始まったんだ。両親と一緒にレストランで食事をする時は、決まってキッチンのドアの周りをウロチョロしてたよ。シェフたちが何をしてるのか、材料や道具をどのように扱うかを観察するのが大好きだったからね。実際、学校を卒業した後は、一刻も早く食材に手をつけたいと思ってたんだ。だから、すぐに現場で仕事ができるよう、積極的にキッチンに立っていたよ。もちろん、働く場所は厳選したけどね。その結果、1989年にはグアルティエーロ・マルケージ氏のもとで仕事させてもらうことになったんだ。

ワカペディア:なるほど!こうしてビジネスマン、、じゃなくて、 『ビジネスマン・シェフ』としてのキャリアが始まったんだね!

ベルトン:ビジネスマン・シェフ?どういう意味?

ワカペディア:私たちワカペディアチームは、スーツとネクタイ姿のアンドレア・シェフも絶対に素敵だと思うの。ハンサムで、背が高くて、まるで大手企業の社長さんみたい!

ベルトン:ははは!ありがとう。でも、スーツとネクタイよりも白いエプロンでいる方がよっぽど好きだよ。シェフの卵にとって、マルケージ氏のレストランで働くことは、夢のまた夢だったからね。業界トップクラスの仕事場で働くことで、レストラン業が本当に自分に向いてる仕事なのかを確かめたかったんだ。

ワカペディア:イタリア料理の巨匠、マルケージ氏とのインタビューは、ワカペディアにとっても思い出があるの!だから彼の悲報を聞いたときはとてもショックだったんだけれど、、、そういえば、すごく知りたいことがあるんだ。学校を卒業した後は、どのように就職が決まったの?子供の頃から既に才能に溢れていたの?それとも、強運の持ち主だったとか?(興味津々のワカペディアチーム)

ベルトン:あはは、少しずつ話すね!実は料理学校で、マルケージ氏と一緒に働いた経験のある男子生徒に出会ったんだ。その彼が、マルケージ氏に出会うキッカケを作ってくれたと言えるかな。マルケージ氏のレストランで働きたがっていた僕を、当時レストランにいた3人のフランス人エグゼクティブシェフに紹介してくれたんだ。僕はどんなお給料でもいいからこのレストランで働きたい!と熱く伝えたんだが、ここで働くにはある程度のしっかりした経歴がないといけないので、採用については「検討して、後日知らせる」とだけ言われたんだよ。(つまりは不採用を意味する決まり文句なんだけれど)

ワカペディア:就活する上でやっかいな履歴書!さすが一流レストランは、審査が厳しいんだね、、、

ベルトン:そうだね。しかも僕は学校を卒業したばかりで、履歴書なんて用意していなかったんだ。それを聞いたシェフらは目が飛び出すほどびっくりしたと同時に呆れて、すぐに僕を追い返そうとしたよ。でも全てが終わりを告げようとしたその瞬間、マルケージ氏が僕たちのいるオフィスに入って来たんだ。この一瞬のチャンスを掴むために、僕は直接自己紹介をして、すぐにでも働けます!と言ったら、面接をしたフランス人シェフらに、「一度やらせてみて、良くなかったら彼を送り返えせばいいよ。」と言って説得してくれたんだ。

ワカペディア:あははははっ!流石、マルケージ・シェフ!

ベルトン:面接の1時間後にそのままキッチンで仕事を始めさせてもらえるほど、とにかくウンザリされるくらい粘ったんだよ。時には頑固さも成功の鍵になるってことだね! (笑)

ワカペディア:マルケージ氏の料理は、あなたにどんな影響を与えたの?

ベルトン:彼からはシンプルさを尊重することと、料理がお皿の中で綺麗にまとまるように表現することを学んだよ。これらの教えを、少しずつ自分自身のやり方と融合させた感じかな。僕の料理は季節、社会に応じて日々進化しているんだけれど、どんな時も忘れない哲学があるんだ。それは、洗練されたガストロノミーや明確な味の料理を提供しようという意思を持つこと。僕が最初にミシュランの星を獲得した、フリウーリモンタルバーノ(Monte Albano)にある『Taverna di Colloredo』で働いたときから大切にしてることさ。今の僕は、さらにバラエティーに富んだ新しい感覚を探求してるよ。例えば、魚と甘草を合わせた料理とかね。

ワカペディア:どうしよう、そんな美味しそうな話を聞いてたら、、、お腹が鳴ってきた!ここのレストランをオープンする前は、ミラノの『Trussardi alla Scalaで働いてたんだよね?

ベルトン:大正解。当時スカラ座のレストランは、革命的な変化が欲しいと言っていたので、喜んで引き受けたんだ。その後自分のレストランを開くことに決めた時は、自分たちで未来を切り開いていけるように、まっさらな土地を探したんだよ。2013年に『Restaurant Berton』をオープンした3年後、コモ湖に別のレストラン 『Berton Al Lago』をオープンして、今ではもう一つのレストラン『 Il Sereno』も経営しているよ。6つのプロジェクトを同時に計画しているんだけど、ここで立ち止まることなんてしないよ!

ワカペディア:やっぱり凄腕ビジネスマン!次はアートについて質問するね。あなたにとって、アートと料理の関係性とは?

ベルトン:料理に大きな影響を及ぼすアートは、僕にとって非常に重要なものだね。マルケージ氏のもとで、アートを愛でることを学んだよ。そういえば、『L’Albereta』で仕事を終えたある夜、彼が僕に電話をかけてきて、アート、文化、人生について明け方まで話してくれた事もあったな。本当に貴重な時間だったし、僕の中にある引き出しを豊かにしてくれたよ。

ワカペディア:マルケージ氏は、眠る前におとぎ話を語るおじいちゃんのような存在だったってことね! (笑)

ベルトン:そうともいえるかな(笑)。他には、モンテカルロで4年間共に働いたシェフ、アラン・デュカス氏からも多くのことを学んだよ。彼の料理に対する考え方は、僕のものと一致しているとすぐに感じたね。仕事を段取り良く準備すること、全てを把握し管理することの重要性を実感したよ。失敗しないように全て調整し、コントロールできるよう全力で取り組んだんだ。

ワカペディア:自分のレストランや複数のプロジェクトを同時に抱えていることからして、そのやり方は大成功だったんだね!ねぇ、スーツとネクタイをプレゼントしたら着てもらえるかな?あなたのビジネスマンスタイルも見てみたいの。それに私たち以外にもそう思っている人達が沢山いると思う(笑)

ベルトン:ありがとう!でも、僕はやっぱり白いコックコートの方が好きかな(笑)。

ワカペディア:あははは、そう答えると思った!ちなみに料理に関して、日本から影響は受けた?

ベルトン:ちょうど去年の11月に日本へ行ったんだけど、文化、教育、おもてなしという感覚を持っているからとてもユニークな国だね。もちろん、日本料理には恋に落ちてしまったよ!とりわけ、その清潔さ、厳格さ、ミニマリズムにインスピレーションを受けたんだ。日本料理は、間違いなく僕にとって最も興味深いガストロノミーの1つだね。僕の最近のメニューでは、たくさんのブイヨンを使うんだ。自分がイタリア人であることのアイデンティティは決して忘れないけど、間違いなく日本料理の影響は受けているよ。

ワカペディア:それを聞けてとても嬉しいよ!ちなみに、日本に行ったら何を食べるの?

ベルトン:絶対に欠かせないのは、約15席くらいしかない、伝統的なお寿司屋さんで本物の職人さんが握った寿司を食べること。カウンターに座って、寿司を握るときの手の一寸の狂いもなく細かく決まった動きを見ながら、繊細な味の魅力までたっぷり堪能するんだ。路地裏の奥にある、知る人ぞ知る隠れ家的なお店に行くのを、毎回楽しみにしてるんだ!

ワカペディア:素敵だね!それじゃあ最後の質問ね。イタリアでお気に入りのレストランは?(にやり)

ベルトン:もちろん、僕のレストランさ!!

ワカペディア:流石、ビジネスマン・シェフ!次は、「テーブルへご案内します」とでも言うのかな?(笑)

ベルトン:そうだね、今日は僕自身が沢山話をさせてもらったから、次は僕の料理との会話を五感で楽しんで欲しいな!(笑)