TOILETPAPER Magazineとは、2010年にコンテンポラリーアーティストであるマウリツィオ・カテラン(Maurizio Cattela)とファッションフォトグラファーであるピエルパオロ・フェラーリ(Pierpaolo Ferrari)が、アートディレクターのミコール・タルソ(Micol Talso)と共同で作成したアート雑誌。誘惑的で挑発的、逆説的なコンセプトがたっぷり盛り込んであり、ポップアートダダイズムシュルレアリスムを連想させるような大胆な色とコントラストに彩られた写真が特徴。出版は年に2回、アート系のブックストアもしくはオンラインで購入が可能。

トイレットペーパーと聞くと、やはり最初に思い浮かぶのはトイレで目にするペーパーのことだろう。しかしインターネットで検索すると、トイレットペーパーマガジン(www.toiletpapermagazine.com)というウェブサイトが一番最初に出てくる。これこそが、今話題のアート雑誌だ。特徴として、このマガジンでは一切文字が使われていない。言葉の代わりにアーティスティックでシュールなイメージが、23ページに渡って掲載されている。そう、まるで活人画(タブロー・ヴィヴァン)とファッションを混同させたような感じだ。ユーモアを交えたポップな外見に目が惹かれたと思いきや、中身は顔も引きつるほどの痛烈な風刺だったりする。ファッションフォログラファーのピエルパオロ・フェラーリは、「トイレットペーパーマガジンは、まるで南イタリアの家族と食事をしているみたいな感じだよ。23品の様々な色と味、インパクトのある食事が一気に出てきて、僕たちはびっくり仰天するような感じさ!」と語る。

食事といえば、トイレットペーパーマガジンはイタリアの食器メーカー、Selettiやインテリアデザインのブランド、Guframなどとコラボレーションしているだけではなく、世界的に人気なファッションブランドMSGMKENZOMaison KitsuneSantoniなどのキャンペーンやデザインなども手掛けた。The Washington PostL’Officiel、フランスの新聞LiberaciónLe MondeELLE Japan の表紙にも起用され、国内外問わず注目されている。パリの現代アート美術館Palais de Tokyo(パレ・ドゥ・トーキョー)のショーウィンドーを飾り、ニューヨークのハイライン公園には巨大なポスターが置かれ、2017年にはKYOTOGRAPHIEにも出展が決まっている。常にその刺激的な内容で世間を賑わせているトイレットペーパーマガジン。次はどんなサプライズが待ち受けているのだろう?

常識破りのトイレットペーパー・マガジンを解き明かす4ステップ!

トイレットペーパー・マガジンは、通常のファッション雑誌とは一味違う。どうやって読み解くのかって?まず、メンバー達の天才的なエッセンスとクレイジーさが混同するアイデアについて、十分に理解することが難しいことはわかってもらいたい。一般的にアーティストは、自分の作品について説明したがらなかったり、作品を読み解くヒントも簡単には教えてもらえなかったりすることがある。何より、そこにたった一つの意味だけが隠されているというわけでもないのだ。可能性は沢山あるにせよ、ワカペディアが考案する「彼らの作品に近づくための近道」は、この4つ!

1) 目の前のイメージが好きか嫌いか、自分の感覚に素直になること。

2) そのイメージの中で、社会に対する批判や、アーティストが家庭環境から受けた影響など、いくつかの異なる趣旨が隠されていないか、探してみること。

3) トイレットペーパー・マガジンが出来た背景や、その意味について理解を深めること。

4) こんなのアートじゃない!と言って、マガジンを放り投げること!

さあ、あなたはどれを選ぶ?

トイレットペーパーについてもっと知りたいあなた。製作者二人にワカペディアが直撃してみた

Wakapedia: ねえ、どうして「トイレットペーパー」という名前を雑誌に付けたの?

Maurizio Cattelan: イタリア語でCARTA DA CULO、つまり「お尻(を拭く)紙」だなんて最高だと思わない?(にやり)アートでもなく、写真でもない。価値はそれほど無いただの紙なのに、人種や階級を問わずみんなの必需品。誰もが世界共通で必要としているもの、それがトイレットペーパーでしょ?

Wakapedia: なるほどね!てっきりアーティスト達の間によくある、ス○トロマニアなのかと思っていたよ!(笑)

Pierpaolo Ferrari: え?!日本のアーティストはそうなの?

Wakapedia: いや、日本人にこだわっている訳じゃないよ。作曲家のモーツァルトとかもそうだったみたいだけれど・・・。それより、トイレットペーパーマガジンがファッション誌とは別物なら、このマガジンに隠された本当の意味は何かあるの?内緒で教えてくれない?きっと誰にも言わないからさ!(笑)

Pierpaolo Ferrari: 誰にも言わないっていうことほど、怪しいものはないよね(笑)。トイレットペーパーマガジンは、ただ写真を掲載するということ以上のものを目指してるんだ。今後は、アートだけではなく様々な分野のマーケットに進出していきたいと思っているし、そのためにも一度見たら忘れられないような、インパクトのある見た目を重視しているよ。僕達はトイレットペーパー・マガジン自体がブランド化することを目指しているのだけれど、究極的にはトイレットペーパーが「一つの生き方」となること。もしくは、読者にとって生きて行く上での「哲学」となることが目標かな。実際にこのマガジンは、ただの雑誌というだけではなく、「ライフスタイル」として日々の生活に取り入れられるしね。

Wakapedia: トイレットペーパーっていうライトな言葉からは想像できないほど奥深いコンセプトだね!(笑)ということは、トイレットペーパーとSelettiがコラボレーションした食器や鏡、絨毯は「日常の中で楽しむアート作品」っていうこと?

Maurizio Cattelan: 僕らにとって「デザイン・オブジェ」と「アート作品」は別物だから、トイレットペーパーが手がけているデザイン・オブジェは、アート作品とは違うんだ。アート作品は本来、高額で限られた人しか楽しめないけれど、それに比べてデザイン・オブジェは、お隣のおばさんでも手に入れられるという優れもの!(笑)日常で使えるものにアートのエッセンスを加えることで、みんながアートという枠にとらわれず楽しめるようになれたらいいよね。

Wakapedia: それなら私達も、アートの世界を全然知らない大家さんに、トイレットペーパーのカップをプレゼントしてみようかな!そういえば、ワカペディアメンバーは実際に何度か製作現場に足を運んだことがあるけれど、トイレットペーパー・マガジンのイメージ(写真)はどうやって作られているのか、ワカペディア読者にもう一度説明してもらえる?

Pierpaolo Ferrari: 最初にアイデアがあって、それを元に作り上げていくんだ。写真の演出には俳優やモデルを起用することもあるけれど、リアリティを追求することが好きだから、架空のものは使用しないよ。そうやって一つ一つのイメージを可能な限り現実に近づけていくんだよ。マウリツィオはもちろんのこと、僕もイタリアの美術や文化をずっと見に来ているから、シンボリズムはどのイメージにも欠かせないと思ってるよ。例えば、キリスト教では魚や鳩というイメージの中には「神様」を連想させるという意味合いもあるんだ。写真一つ一つに表現されているイメージは、人によって受け取る印象や意味合いが違ってくると思うし、文化が違えばなおさらだよね。どんな意見も受けとめられるオープンマインドさが僕たちの特徴かな!(にっこり)

Wakapedia: 確かに誰が見てもわかりやすいイメージだし、子供でもハマってしまうくらい幅広い読者がいるのは、このマガジンの特徴だよね!そういえば トイレットペーパーのコンセプトって、ポップアートの先駆者でもあるアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)がすごく好きそうなコンセプトだけれど、アンディ・ウォーホルからインスピレーションは受けているの?

Maurizio Cattelan: 彼はコミュニケーション界の巨匠だしね。僕らが作品を作る時はいつも自発的で、知らず知らずのうちに作品が出来上がっていくんだ。ウォーホルがそうしていたようにね。

Wakapedia: ピエルパオロのミラノの実家にある地下室、別名「トイレットペーパー・ファクトリー」は、まるで世界的に有名なウォーホルのアトリエ「ザ・ファクトリー」の生まれ変わりみたいだね!トイレットペーパーも世界的に人気が出ているし・・・何かを予知してたのかも?!(笑)

Maurizio Cattelan: いや、僕らはただ現実主義なだけだよ(笑)。

Wakapedia: 最後に、トイレットペーパー・マガジンの特性をあなたの言葉で表現してみると?

Maurizio Cattelan: 全てのイメージのベースにユーモアがあるんだ。あとは、シャイな自分に打ち勝つためにも、シューリアリズムを用いて表現することはあるかもね。

Wakapedia: 今日はどうもありがとう!それじゃあ、今後もワカペディアはトイレットペーパーにお世話になるので、これからも宜しくね❤

Maurizio Cattelan:うん、是非インターンシップ生ということで頑張ってくれ!(満面の笑み)

Wakapedia: まだインターンシップ生?!ちょ、ちょっと待って!ピエルパオロ、何か言ってよ!

Pierpaolo Ferrari: そういえば来週から日本に行くけど、Vrinda (新妻)と一緒に桜は見れるかな〜?♪

【ピエルパオロの可愛い発言にワカペディアが胸キュンしている間に、マウリツィオは愛用の自転車でミラノの街へと走り去って行った。】

Description & Interview: Sara Waka

Edited by:Yurie.N