ベトニー・ヴェルノンはアメリカヴァージニア州出身のジュエリーデザイナー。幼少期より芸術に触れ、大学でアートを先攻する傍ら金細工技術を学ぶ。イタリアに渡り、イタリアドムスアカデミー(Domus Academy)で修士号を取得。持ち前のクリエイティブさが話題となり、ミッソーニジャンフランコ・フェレスワロフスキーパンパローニアレキサンダー・ワン等とコラボレーションをし、注目を集める。ジュエリーは、社会的なしがらみから逃れるという意味を込めた『自由と解放』をテーマにデザインされており、レディー・ガガアンジェリーナ・ジョリークリスティーナ・アギレラなど多数のセレブに愛用されている。カール・ラガーフェルドが手掛けたピレリカレンダーにも起用され、2011年には自身のジュエリーコレクション・パラダイス・ファウンド・ファイン・エロティック・ジュエリー(Paradise Found Fine Erotic Jewelry)を発表。一般的にはタブー視されている肉体的快楽の表現を、ファッションの一部としてジュエリーに取り入れた。2012年、ミラノのトリエンナーレTriennale“KAMA – Sex & Design”)にて自身が手掛けたチェア「オリジン」を発表し、2013年には自身の著書ブドゥアール・バイブルThe Boudoir Bible – The Uninhibited Sex Guide for Today)を出版。そのユニークさが話題となり、世界的に活躍の場を広げる注目のデザイナー。

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Jewelleries made by Beony Vernon

ワカペディアの見るベトニー・ヴェルノン

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Poison Ivy

ベトニーとの出会いは、イタリア人アーティスト、ピエロ・フォルナゼッティPiero Fornasetti)のミステリアスな屋敷の中だった。背が高く、赤いロングヘアにライトグリーンの目をした彼女。ベトニーはすごく落ち着いた話し方をする人で、バットマンの映画に出てくるポイゾン・イブのキャラクターにものすごく似ていた。でも何より一番印象的だったのは、まるで母親が子供を見るようなその優しい目だった。ミステリアスなお屋敷の中で会ったということもあってか、彼女は更に神秘的に見えた。その日は日差しの強い三月の中旬で、素敵なシークレットガーデンの中でインタビューをした。今回、とても大声では話せないような、かなり際どいガールズトークで盛り上がった私達。そんなベールに閉ざされたような独特の雰囲気をぶち壊してくれたのは、若いマッチョなガーデナー(庭師)。いかにもYOUNG MAN [Y.M.C.A.](ヤングマン ワイ・エム・シー・エー)を歌っていそうな風貌の彼。庭木の手入れをするだけのはずなのに、自分の存在に気づいてほしいのか、なぜか大きい音を立てながらどんどんサラワカ達が座ってるテーブルに近づいてきていた!

サラワカ:Ciao!ええっと・・・ブレト・・・ベト・・・ベトベト

ベトニー:ベトニーよ。ふふふ

サラワカ: 今日は私、あなたの事が知りたくてここにここへ来たの!よろしくね。

ベトニー:いいわよ、何も隠す事なんてないわ。私はとってもオープンな性格なの。今日は私のすべてをあなたに捧げてあげる。

サラワカ:?!ずいぶんドキドキするような事を言うんだね!(笑)

ベトニー:そう?なら、もっとあなたの近くに座るわよ。

サラワカ:いやいや。。。心臓が爆発したら困るから、そこにいて!(笑)ところで、ベトニーって名前はめずらしいよね?

[ガーデナーが私たちの存在に気づいたらしく、わざわざこちらに来て花を植え始めた。欧米でガーデナーと言うと、少しタブーなイメージがある。このCMのようにね]

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Betony the flower

ベトニー:そうね。私の名前はベトニー・ヴェルノンなんだけど、ベトニーって花の名前なのよ。私の母はとても花が好きなの。でも彼女は多分、ローマ時代にはそれが治療の花としてとても重宝されていた事は、知らなかったでしょうね。アウグストゥス帝はこの花に関しての本も書いたし、ローマ帝国時代には「コートを売ってベトニーを買いなさい」とまで言ったそうよ。

サラワカ:それならきっとベトニーっていう名前があなたのパーソナリティーを生み出したのかもしれないね!周りに影響されないユニークさが出来上がって、これまでのキャリアに繋がっていったとか。

ベトニー:どうかしら?星占いでは天秤座と獅子座で、干支では猿よ。社交的で色々な人に自分を捧げるのが好きらしいわ。

サラワカ:じゃあ血液型は?

ベトニー:O型よ。どうして?

サラワカ:私もO型!日本では星占いより、血液型を聞くことの方が多いんだよ!

ベトニー:あら、それは面白いわね!O型はどの血液型にでも輸血ができるし、私たちは気前が良すぎるのかも(笑)ということは私、サラワカからも血が貰えるという事ね。ふふふ

サラワカ:いや、そうなったらサラワカは全力で逃げるよ!(笑)ところで、どういう風にあなたのキャリアは始まったの?

ベトニー:幼い頃からアーティステックな環境で育ったの。父はパイロットでもあり発明家でもあったから、彼の工場でよく遊んでいたおかげで細かい手作業を覚えたわ。母はバージニア州にあるクライスラー美術館Chrysler Musium of Art)のリーダーだったの。

父と離婚をした後、養育権を取れなかった彼女はバージニアに移住したのだけど、それは当時母がアフリカ系アメリカ人の公民的運動を支持していたからなの。60年代にアフリカ系アメリカ人の人権獲得のために奮闘するような人は、子供の養育権を得る資格がないと思われて、裁判で負けたのよ。だから私は、父に育てられたの。

サラワカ:そうだったのか~。お母さんはまるで、ワンダーウーマンみたいな人なんだね!

ベトニー: とても気さくで素晴らしい女性よ。彼女から様々な芸術的な感覚やインスピレーションを受けたわ。その感性をなんとか私の職人達に伝えようと頑張っているの。特に仕上げには、すごくこだわるわね。私が作るオブジェは、外側も内側もどちらも完璧でないといけないの。表面もなめらかでないと駄目だわ。

[気づけば若いマッチョガーデナーは、私達のすぐ傍にいた。俺はここに居るぞ!とでも言いたいのか、すごい音をたてながら使い古されたガラスを捨てている。]

サラワカ:たしかにベトニーが作った、あのミラノのトリエンナーレに置かれた椅子とかもすごく滑らかだよね。思わず触りたくなるような滑らかさだし!

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Henraux – Triennale Design Museum – Milano

ベトニー:あら、そんな風に褒めてくれてとても嬉しいわ(笑)皆がその良さをわかってくれるわけじゃないの。職人達にも、自分たちの作るものにはちゃんと愛を入れないとだめよ、make love to themって教えているわ。

サラワカ:なるほどね。ちょっとデリケートな話だけど、ある意味自分の作る作品と愛を育む(セックス)ことは大切って事なんだね!でもそれが必要なのって、特に女性なのかな?

ベトニー:女性だけじゃないわ。例えば私の最近出版された本、ブドゥアール・バイブルThe Boudoir Bible )では、男性も女性と同じようなオーガズムを達する事ができることを書いているわ。それができるようになると女性みたいな楽しみを味わう事ができるのよ。最初は難しいけれど、少しずつできるようになっていくはずよ。

サラワカ:なるほどね。ベトニーにとって愛情ってどんなもの?

ベトニー:とっても大切な物よ。私はフィーリングと化学の総合だと思うわ。決して男と女の仲だけのものじゃないの。友達同士でも必要な物よ。例えば私とあなたが今ここ座っていて、もしお互いのフィーリングが合わなければ、ここまで話が出来なかったと思うの。でも今私達はすごい深い話まで何でも話しているわ。

サラワカ:確かに。この初対面とは思えないオープンさ!!(笑)ベトニーのデザインするオブジェは、そのオブジェと使う人との間を密接にするのが目的なんだよね?

ベトニー:ええ、それってとても重要なことだと思うの。私が1992年に初めて出したコレクション、サド・シックSade Chic)は後にパラダイスファウンドParadise foundという名前に変更したんだけど、このコレクションは300個ものオブジェで出来ているの。最初はただ性的なシンボルとしてデザインしていたんだけれど、エロティックオブジェの世界では、美観とマテリアルへのこだわりが欠落していたのよ。だからただシンボルとしてではなく、もっと実用性も追求することにしたの。

[さっきから大きい音を立てて仕事をしていたガーデナーが更に大きな音を立てながら、何かをハンマーで打ち始めた。後でそれをやってもらう事はできないの?とベトニーが聞くと、若いマッチョガーデナーは、どうしても今やらないといけないんだと言って、結局私たちのガールズトークを最後まで聞いていた。いやらしい・・・]

ベトニー:話は戻るけど、1992年から自分のためにアクセサリーをデザインし始めて、素材は銀を使ったの。プラスチックなんかより体にいいわ。それから1996年にアメリカのバーニーズのバイヤーさんに提案してみたの。例えば銀の指輪とブレスレットが繋がっているやつとかね。

サラワカ:それは何につかうの?

ベトニー:あのアクセサリーは、人と人を繋げるために作られた物なの。シンボルとしての意味だけではなく、実用性もあるのよ。金属には導く力があるの。

サラワカ:なるほど!脳にも刺激的なんだね!(笑)

ベトニー:そうよ。それに私達は常に時間と体へのリミットを考えないと駄目なのよ。私達が抱える欲求、必要性、それらが揃うベストな瞬間をちゃんと自分で確かめてからではないと、本当の喜びに達する事ができないわ。多くの神経とエンドルフィンが交わって行きつく場所よ、心理学と生理学のミックスね。

サラワカ:なるほど!あなたのジュエリー/オブジェが成功する理由がわかってきた気がする!レデイー・ガガやクリスティーナ・アギレラも愛用しているんだよね?

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Jean Paul Gaultier’s show/ Christina Aguilera’s album cover/ Lady Gaga’s Paparazzi

ベトニー:レデイー・ガガパパラッチっていうプロモーション・ビデオで身に付けてくれたの。スワロスキーたっぷりの銀の首輪よ。彼女はその首輪の意味をちゃんと知った後で、プロモーション・ビデオに使ってくれたの。あの首輪は、事故の後で首を固定するコルセットからインスピレーションをうけたものよ。アギレラは私のリングをアルバムのカバーに使ってくれたわ。GQマガジンはあれをブロージョブリングと言っていたけど、実際にはペッティングリングっていう名前なの。あのリングは、これまでのコレクションの中で一番大切にしてるリングよ。精神とセックスは繋がってないといけないから。ちなみにこれは、ヨガのジェスチャーを元に考えたの。

でも1996年にあの指輪をアメリカのバイヤーに見せた時、「ノー!」というコメントしか返ってこなかった。だからこのリングはしばらくの間引き出しの中に放置して、別のジュエリープロジェクトを進めて行ったの。でも2001年9月11日ツインタワーの出来事の後、もうこれ以上待つのはやめなきゃと思ったの。この世の中のシステムは狂っている。物に溢れた今の時代の中で唯一足りないものは『愛』だから、私はもう一度このプロジェクトを始めようと思ったのよ。愛と喜びをもう一度見つけるためにね。愛の言葉を知性で伝えるのはとても難しい事よ。現代社会ではセックスという言葉は昔ほどタブーではないけれども、快楽という言葉はまだタブーなんじゃないかと思うわ。精神分析学者のシーグムンド・フロイトが言うように、もしこの世に快楽と誘惑のノウハウがもっとあったとしたら、セックスへの欲求不満や様々な病気がこの世から無くなって、世界はもっとうまく回るんじゃないかしら。

サラワカ:なるほど。ベトニー今日は本当にありがとう。色々な話が聞けただけじゃなくて、とってもいい勉強になったよ!じゃあ最後のお決まりの質問・・・キスしてちょーだい!

ベトニー:ふふふ

そう言うと、彼女はとても深くて長いキスをおでこにしてくれた。

サラワカ:ねえ、なんでおでこを選んだの?

ベトニー:それはあなたの第3の目を起こすためよ。

サラワカ:わぉ!なんだかまるでセーラームンのエネルギーがみなぎってきてるみたい!

 (笑)

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Sara Waka/ Betony Vernon/ Giulia Bison

Description & Interview: Sara Waka

Edited by:Yuliette