HAKIMONOプロジェクト

革靴の本場といえば、伝統と歴史のあるヨーロッパを思い浮かべる人も多いかもしれないが、日本にも世界に誇る独自の革靴作りがあるのはご存知だろうか?靴作りで面白いのは、靴の特徴に各国民性がよく現れているということ。例えば、いかにもセクシーさのあるエレガントなイタリア、オシャレながらシックさのあるフランス、まさに英国紳士の王道とも言えるオーソドックスなイギリス。そして、それぞれのエッセンスを精巧な職人技術で少しずつ混ぜ合わせたのが、日本のスタイルだ。日本の革靴作りは、靴そのものの個性だけではなく、履く人の装いも引き立てるという「奥ゆかしさ」を兼ね揃えている。高い職人技術と伝統文化が融合した結晶とも言える日本製の革靴を、海外に発信するために立ち上げられたプロジェクトが、「HAKIMONO」だ。日本経済産業省によるこのプロジェクトを通して、FUGASHIN、Hiroshi kidaH.KATSUKAWAJOE WORKSKyoto sasageLafeetMARIEOHIRAMIYAGI KOGYOREGAL、RENDOそしてKITENの11ブランドが、216 日からミラノで開催される靴の合同展示会「MICAM」に出展する。今回は、そのうちの4ブランドを先立ってご紹介!

FUGASHIN

風雅心(読み方:フウガシン)の原点は、ラグジュアリー感溢れるブランド、Perfettoだ。イタリア語で「完璧な」という意味のPerffettoは、ベトナムの工学博士として靴メーカーと仕事をしていた創立者が、「もっと完璧な靴を自分自身で作りたい」と思い立ったことに由来しているそう。その後、世界に進出していくにあたり、日本の技術を誇るには日本の名前で勝負したいという気持ちから、海外で発表する際のブランド名はKANPEKINAを使用している。Perfettoのセカンドラインとして発表されたのが、風雅心(FUGASHIN)だ。日本の伝統的な感性を活かした靴を、世界中の人に履いてもらえるようにとの意味が込められた風雅心(FUGASHIN)だが、注目は、通常モデルとプレミアモデルという2種類のコレクションを作ることで、履き手の需要に合った靴選びができるという点だ。特に、異なる2種類の製法にこだわっており、丈夫で長持ちしやすい靴なら、グッドイヤー・ウェルト製法。柔らかく足に馴染みやすい靴なら、ボロネーゼ製法だろう。最高級の革を使用していながらも、幅広い層に利用してもらえるような価格設定であることも、ポイントだろう。まさに日本の「技」と「センス」を最大限に活かした、プレミアムなコレクションなのだ。

KITEN

50年以上受け継いできたノウハウや技術を活かし、スニーカーやアウトドアシューズなど幅広く手がけている、株式会社ニチマンKITENは、既存の概念にとらわれず、進化し続けていくスニーカーをコンセプトに生まれた。イタリアの有名ブランドGUCCIの製品にも使われている、フィレンツェ産のレジーナという高品質な革を使用し、何度も色を重ねる事で味わい深い色を出している。また、一般的にアウトドア用のブーツは、長持ちするようグッドイヤー・ウェルト式製法で作られているため、重みがあるものが一般的だが、KITENの製品は柔らかく、軽くなるようにデザインされているのが特徴だ。手間ひまかけて作られた一足一足には、高度な職人技術が凝縮されており、まさに伝統が作り上げたハイクオリティな靴ブランドと言えるだろう。

JOE WORKS

靴の製造会社を運営しているうちに、「自分達でやればより良いものを作れるかもしれない」という思いから誕生したのが、JOE WORKS だ。イギリスのクラシックシューズによく使用されているグッドイヤー・ウェルト製法に、機械だけではなく手作業を加えることで、より滑らかさを出している。イタリアフランス産の革を使用し、イギリスのクラシックなデザインを参考にしながらも、個性をあえて全面に出しすぎないという「日本らしさ」を心がけている。中でも大切にしているのは、履き心地。万人向けに機械で作るとどうしても全てが均等になり、足にフィットしにくい部分が出てきてしまうのを、「吊り込み」という靴の甲部分を足の木型に合わせる作業に手を加えることで、履く人の足によりフィットするよう、細かい凹凸やカーブを再現するのがこだわりだ。その品質が評価され、今ではヨーロッパカナダアジアでシェアを拡大しつつある注目のブランドだ。

 RENDO

創立者の吉見鉄平氏は、日本で靴作りを学んだ後、ロンドン留学を経て紳士靴の会社に就職した。そんな中、元同級生が海外でデビューしたり、友人らが自身のブランドを立ち上げる姿に触発され、再度海外で挑戦しようとヨーロッパへ拠点を移した。そこで様々な靴を設計し、経験を積んだ後、東京浅草で自身のブランドを設立。工場で既製靴の生産をしていた経験を活かし、「より親しみやすい靴」を作るためのアイデアをパターンに落とし込んでいった。形やデザインから履き心地まで細かく気を配り、一から全てを作り上げる。スムーズなチームプレイを大切にするという姿勢から、RENDO というブランド名を選んだ。靴は多くの人の足に合うよう設計されているが、一人ひとりの足に合わせて革を加えたり、削ったりと微調整を加えることで、より個人に合った快適な靴作りを目指している。

Article: Wakapedia Japan Team

Photo: Daizaburo Nagashima