ワカペディアのインタビューを快く引き受けてくれた、イタリア料理界の巨匠、グアルティエロ・マルケージがこの世を去ってから、約1年。温かいおじいちゃんのような存在だった彼の悲報は、ワカペディアメンバーにとっても大きな衝撃だった。鳩が沢山押し寄せるミラノの観光地、ドゥオーモを例え、「君が今食べているのは、ドゥオーモ前の鳩だよ」なんてジョークで私たちを笑わせつつも、料理を語る真剣な眼差しや、アーティストさながらの情熱を感じた彼のインタビューが、まるで昨日のことのように鮮明に浮かんでくる。(グアルティエロ・マルケージ氏のインタビューはここから

イタリア料理界のキングとして世界中に知られ、これまでの伝統的な料理を、ワンランク上の洗練された「モダン・イタリアン」へと昇華させたマルケージ氏。彼の功績を讃えるため、マルケージ財団政府観光局ENITによる『グアルティエロ・マルケージ・グレート・イタリアン』ワールドツアーが、世界10都市で開催された。このツアーでは、国際的に活躍する28人の凄腕シェフによるマルケージ氏へのオマージュを込めて作った料理や、マウリツィオ・ジゴラ監督によるマルケージ氏のドキュメンタリー『グレートイタリアン』を楽しめる。ツアーは201811月にシカゴで幕を開け、 ニューヨーク香港を経て、東京では2018111926日に開催された。ツアーのファイナルとなる最終日の2019319日は、シェフの地元ミラノで開かれる予定だが、ちょうどこの日は彼の89回目の誕生日と重なるため、最大の見所だ。

マルケージ氏との別れを惜しむワカペディアチームも、東京イタリア文化会館で開催されたツアーに参加させてもらった。ディナーでは、彼の料理の代表作から得たインスピレーションと、日本の食材やテクニックを掛け合わせた「ミラノ風和牛フィレステーキのサフランクリーム添え」など、12種類の料理が次々とテーブルに運ばれてきた。マルケージ氏の弟子であるアントニオ・ギラルディ(Antonio Ghilardi)や、BVLGARI銀座タワーのブルガリ イルリストランテ(Bulgari Il Ristorante)で総料理長を務める、ルカ・ファンティン(Luca Fantin)、ミシュラン三ツ星を獲得したフランス人シェフで世界初の支店となるレストランを北海道に出したミシェル・ブラス トーヤ(Michel Bras Toya)など、豪華シェフらが生み出す味のハーモニーは絶妙で、どの料理も極上だったのは言うまでもない。イベント最終日の締めくくりには、ドキュメンタリー映画『グレートイタリアン』が上映された。このドキュメンタリーの製作は、マルケージ氏に敬意を表したCantine Ferrari、Illycaffè、Parmigiano Reggiano、S.Pellegrinoといった、日本でもメジャーなイタリアンワインやカフェ、食品メーカーの支援により実現した。

マウリツィオ・ジゴラ監督によるこのドキュメンタリーは、イタリアフランス、そして日本を飛び回るマルケージ氏の2年間の旅を追ったものだ。(偶然にも、ワカペディアチームが拠点を置く都市と重なるというサプライズ付き?!)80分間の映像の中には、ワカペディアのインタビューアーの一人でもあるカルロ・クラッコ(Carlo Cracco)やマッシモ・ボットゥーラ(Massimo Bottura)、アラン・デュカス(Alain Ducasse)、マルク・エーベルラン(Marc Haeberlin)、アンドレア・ベルトン(Andrea Berton)、ピエトロ・リーマン(Pietro Leemann)、ダヴィデ・オルダーニ(Davide Oldani)など、国際的に活躍するシェフらのインタビューも含まれている。マルケージ氏に憧れてシェフの道へと進んだ次世代トップシェフらが、料理だけではなくマルケージ自身の人柄にまつわるエピソードを披露するなど、その魅力がギュッと詰まったドキュメンタリーなのだ。自国愛が強いと言われるフランス出身のシェフですら彼を尊敬しているのだから、これは本物だ!

ワカペディアメンバーは、グアルティエーロ氏の偉大さについては知っていたものの、このイベントを機に、彼がどれだけ多くの人々に愛されていたのかということと同時に、彼と料理や文化について話し合えたことは、掛け替えのない時間であったと改めて実感した。

グアルティエロ・マルケージ氏に敬意を込めて。